災害時の避難というと「避難所へ行くこと」を思い浮かべがちですが、結論から言えば、避難とは安全を確保する行動全般のことで、自宅にとどまる在宅避難や、建物の上の階へ移る垂直避難も含まれます。大切なのは、警戒レベル3〜4を目安に早めに行動を始めることと、持ち出し品や家族の集合場所を平時に決めておくことです。この記事では、避難の種類の整理から、避難を始めるタイミング、出発前の準備チェックリスト、避難所や在宅避難での過ごし方、高齢者・乳幼児・ペットへの配慮まで、一般家庭が押さえておきたい基本をまとめて解説します。
避難にはどんな種類がありますか?
大きく分けると「立退き避難」「在宅避難」「垂直避難」の3つがあります。避難所へ行くことだけが避難ではなく、状況に応じて安全な行動を選ぶことが避難の本来の意味だとされています。
| 種類 | 内容 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 立退き避難 | 自宅を離れ、避難所や安全な親戚・知人宅などへ移動する | 浸水や土砂災害の危険区域に住んでいる場合、自宅の倒壊・損壊のおそれがある場合 |
| 在宅避難 | 自宅にとどまり、備蓄でしのぎながら生活を続ける | 自宅が安全な場所にあり、建物にも被害がない場合 |
| 垂直避難 | 建物の2階以上など、いまいる場所より高い所へ移る | 浸水が始まり、屋外への移動がかえって危険な場合の緊急手段 |
どれか1つが常に正解というわけではありません。ハザードマップで自宅の危険度を確認したうえで、災害の種類ごとに「わが家はどれを選ぶか」を決めておくことが大切だとされています。なお垂直避難は逃げ遅れたときの緊急手段であり、最初から当てにしないことが基本です。
いつ避難を始めればいいですか?
風水害では、警戒レベル3で高齢者など避難に時間がかかる方が避難を開始し、警戒レベル4で対象地域の全員が危険な場所から避難する、というのが政府の一般的な枠組みです。警戒レベル5を待ってから動くのは危険だとされています。
| 警戒レベル | 状況 | とるべき行動 |
|---|---|---|
| 1 | 今後、気象状況が悪化するおそれ | 最新の気象情報に注意し、心構えを高める |
| 2 | 気象状況が悪化 | ハザードマップで避難場所・経路を確認する |
| 3 | 災害のおそれあり | 高齢者等避難。高齢者や障害のある方などは避難を開始 |
| 4 | 災害のおそれが高い | 避難指示。危険な場所から全員避難 |
| 5 | 災害発生または切迫 | 緊急安全確保。命を守る最善の行動をとる |
警戒レベル5は「すでに安全な避難が難しい状況」とされており、この段階での屋外への移動はかえって危険な場合があります。「レベル4までに避難を終える」が原則です。なお地震では警戒レベルの発表はないため、揺れが収まったら建物の安全を確かめ、危険があればためらわず避難すると覚えておくとよいでしょう。
避難前に何を準備すればいいですか?
「持ち出し品」「家の処置」「家族との約束」の3つを整えておくのが基本です。発災後は考える余裕がなくなるため、平時にチェックリストの形にしておくことが推奨されています。
- 持ち出し品:飲料水、非常食、懐中電灯、モバイルバッテリー、携帯ラジオ、常備薬とお薬手帳のコピー、現金、身分証のコピー、携帯トイレ、着替えなどを、両手が空くリュックにまとめておきます
- 家の処置:出発前に余裕があれば、電気のブレーカーを落とす、ガスの元栓を閉める、窓と鍵を閉める。通電火災などの二次被害の予防につながるとされています
- 家族との約束:集合場所と避難先を複数決めておく、離ればなれのときの連絡手段(災害用伝言ダイヤルなど)を確認しておく、年に1回は家族で避難経路を実際に歩いてみる
非常持ち出し袋は玄関など動線上のすぐ手に取れる場所に置き、季節や家族構成の変化に合わせて年1〜2回見直すのが目安とされています。
避難所ではどう過ごせばいいですか?
避難所は「助け合いで成り立つ共同生活の場」と捉え、受付・ルールの確認・健康管理の3点を意識するのが基本です。避難所は行政がすべてを提供してくれる場所ではなく、避難者同士の協力で運営されるのが一般的です。
- 到着したらまず受付で名前や世帯の情報を伝え、指定されたスペースを使います
- 生活ルール(消灯時間、トイレやごみ捨ての分担、共有スペースの使い方)を確認して従います
- 感染症予防のため、手洗い・マスク・換気を心がけます
- 長時間同じ姿勢を続けず、ときどき体を動かしてエコノミークラス症候群を予防します
- 困りごとや体調の変化は我慢せず、運営スタッフに早めに伝えます
プライバシーが限られる環境だからこそ、周囲への配慮と「お互いさま」の気持ちが、避難生活の負担を減らす一番の工夫だとされています。
在宅避難はどんなときに選べますか?
「自宅そのものと周辺が安全であること」が条件です。ハザードマップ上で浸水や土砂災害の危険区域に入っておらず、建物に倒壊・損傷のおそれがない場合に、自宅にとどまる在宅避難が選択肢になるとされています。
在宅避難を支えるのは日ごろの備蓄です。
- 飲料水は1人1日3リットルが目安。最低3日分、できれば1週間分が推奨されています
- 食料も同じく最低3日分。カセットコンロとボンベがあると温かい食事がとれます
- 携帯トイレは1人1日5回分程度が目安とされています
- 停電に備えて、明かり・乾電池・モバイルバッテリーを多めに用意します
在宅避難中でも、自治体の避難所などで水・食料や情報の提供を受けられる場合があります。また、周辺の状況が悪化したときには立退き避難へ切り替える判断も忘れないようにしましょう。
高齢者や乳幼児、ペットがいる場合はどうすればいいですか?
「早めに動く」「その人に合った備えを足す」の2つが基本です。避難に時間がかかる方がいる家庭は、警戒レベル3の段階で避難を始めることが政府の枠組みでも想定されています。
- 高齢者:常備薬・お薬手帳、眼鏡や補聴器の予備、必要な介護用品を持ち出し品に追加します。避難経路は段差の少ないルートを事前に確認しておきます
- 乳幼児:ミルク(液体ミルクは調乳不要)、おむつ、離乳食、抱っこひもなどを追加します。母子健康手帳のコピーもあると安心です
- ペット:ペットと一緒に避難する「同行避難」が原則とされていますが、避難所で同じ空間で過ごせるとは限りません。ケージ、フード、排泄用品を準備し、受け入れの可否を自治体に事前確認しておきます
支援が必要な方の避難を地域で支える仕組み(個別避難計画など)を設けている自治体もあります。お住まいの自治体の窓口に相談しておくと、いざというときの安心につながります。
よくある質問
避難所に行くことだけが避難ですか?
いいえ。安全な親戚・知人宅への避難や、自宅が安全な場合の在宅避難も避難の一つとされています。ハザードマップで自宅の危険度を確認し、災害の種類ごとに行き先を決めておきましょう。
警戒レベル4とはどんな状況ですか?
市区町村から避難指示が発令され、対象地域の全員が危険な場所から避難すべき段階とされています。レベル5を待たず、レベル4までに避難を終えることが原則です。
夜間や豪雨で避難所への移動が危険なときはどうすればいいですか?
無理に屋外へ出ず、建物の2階以上や崖から離れた部屋へ移る垂直避難で、少しでも安全を確保することとされています。そうならないためにも、明るいうちの早めの避難が何より大切です。
非常持ち出し袋はどこに置けばいいですか?
玄関や寝室など、避難の動線上ですぐ手に取れる場所が目安です。車で避難する可能性がある場合は、車にも最低限の水や毛布を積んでおくと安心です。
ペットと一緒に避難所に入れますか?
同行避難が原則とされていますが、居住スペースは人とは別になる避難所が多いのが実情です。受け入れのルールは自治体ごとに異なるため、事前の確認をおすすめします。