自治体の防災DXは、防災アプリを導入することだけではありません。平時の備えから災害切迫時の避難、発災後の応急対応、復旧・復興まで、情報と手続きを切れ目なくつなぐ取り組みです。
デジタル庁は、防災分野のサービスを「平時」「切迫時」「応急対応」「復旧・復興」の4フェーズで整理しています。この記事では、この分類に沿って使われる仕組みと、導入を失敗させない進め方を解説します。
鈴木(新人)「最新アプリを導入すれば、紙の受付も電話も全部なくせそうです。」
佐藤(上司)「停電や通信障害、端末を使えない人もいる。デジタルを主経路にしつつ、代替手段と後から統合する方法を残そう。」
4つのフェーズで何をデジタル化しますか?
| フェーズ | 主な業務 | デジタル化の例 |
|---|---|---|
| 平時 | 計画、訓練、要支援者、備蓄 | 計画管理、訓練記録、地図、名簿・個別避難計画 |
| 切迫時 | 観測、警戒、避難情報 | 気象・河川情報の集約、多言語配信、避難所開設判断 |
| 応急対応 | 被害把握、避難所、物資、応援 | 現地報告、避難所受付、混雑・物資管理、機関間共有 |
| 復旧・復興 | 被災者支援、証明、復旧事業 | 申請、罹災証明、支援制度案内、進捗管理 |
一つの製品ですべてを置き換える必要はありません。重要なのは、フェーズが変わるときに同じ情報を入力し直さず、責任部門へ引き継げることです。
避難所運営はどう変わりますか?
避難所では、受付、人数把握、要配慮者への支援、物資、退所管理が同時に発生します。紙の名簿だけでは集計と共有に時間がかかるため、事前登録、二次元コード、マイナンバーカード等を使った受付や、避難所状況の可視化が検討されています。
デジタル庁は自治体や事業者と、避難者支援業務をデジタル化する実証を行っています。見るべき成果は「受付が何秒になったか」だけではありません。
- 通信が不安定でも受付を続けられるか
- スマートフォンやカードを持たない人へ対応できるか
- 要配慮者の情報を必要な担当だけが見られるか
- 同一人物の重複登録を直せるか
- 避難所、本部、都道府県で同じ集計を共有できるか
- 退所後のデータを適切に保管・削除できるか
紙をなくすことより、紙で受けた情報も後から安全に統合できる運用が重要です。
AIはどこで使われますか?
主な役割は、大量の情報を整理し、人の判断を支えることです。
| 用途 | 期待できること | 人が確認すること |
|---|---|---|
| 被害情報の整理 | 投稿・報告の分類、地図上の候補抽出 | 真偽、重複、緊急度 |
| 画像解析 | 浸水・損壊などの候補検出 | 現地確認、誤検出 |
| 問い合わせ案内 | 避難所や支援制度の一般案内 | 最新性、個別事情 |
| 文書作成 | 状況報告や議事録の下書き | 数値、出典、表現 |
| 予測 | 配備や避難判断の参考情報 | 他の観測情報との照合 |
避難指示や救助の優先順位など、責任を伴う判断をAIだけで決めないことが前提です。出力の根拠を確認できること、訂正できること、判断者と時刻を記録できることを要件にします。
実証から本格導入へどう進めますか?
実証では成功率だけでなく、使えなかった人と理由を記録します。高齢者、障害者、外国人、観光客、端末を持たない人へ届かなければ、防災サービスとしての穴が残ります。
調達前に確認する12項目
デジタル庁の「防災DXサービスマップ・カタログ」は、自治体がサービスを探す際の入口になります。ただし、掲載されていることと、自自治体の要件に適合することは別です。同じ災害シナリオで複数候補を実演してもらいます。
企業の防災担当が学べること
自治体と企業では役割も規模も違いますが、進め方には共通点があります。
- 全社導入前に、1拠点・1訓練で試す
- 通知、回答、判断、復旧の受け渡しを確認する
- デジタルを使えない人と通信断時の代替を残す
- 導入後の訓練と更新を契約・年間計画へ含める
- 自社拠点の自治体が公開するハザードマップ、避難所、配信サービスを確認する
企業のシステム選定では、危機管理システムのRFP24項目も使えます。
よくある質問
防災DXと防災アプリは同じですか?
違います。アプリは住民との接点の一つです。防災DXには、庁内・機関間の情報共有、避難所、物資、被災者支援、復旧業務まで含まれます。
AIの予測だけで避難を決められますか?
決めません。観測、現地報告、気象情報、専門家の見解などと組み合わせ、権限を持つ人が判断します。
小規模自治体はどこから始めますか?
住民向けの新機能より先に、職員が何度も転記している業務や、状況集計に時間がかかる場面を一つ選びます。共同利用や既存基盤との連携も検討します。
今日確認すること
自社または自治体の災害対応を「平時・切迫時・応急対応・復旧復興」の4列に分け、同じ情報を入力し直している箇所へ印を付けてください。最も回数が多い受け渡しが、最初の改善候補です。